本研究の目的は、今日の免疫学の視点を文化学に導入し、文化の主体のありかを、コミュニティ内部から排除され周縁に置かれた「インミュニティ(免疫)=アジール」にあると措定することで、マクロ・中央集権・リアリズムの世界観を、ミクロ・周縁・虚構=無視・排除されたものの方から逆説・異化し、新しい文化学創成のための一つのモデルを示すことであった。最終年度にあたっては、これまでの研究調査成果を統合し、従来の「文化学」を刷新する「文化免疫学」の創成のモデルを提示し、それを論文、および刊行物のかたちで発刊するのが本年度(最終年度)の目標であった。その際の具体的作業の中心は、およそ前年度までに構築された理論およびその方法を対象地域の調査・分析で得られた結論と照らし合わせながら、さらに検証を深めることにあった。ただし、東慶寺のアジール性の問題に関しては、平成21年度の調査を踏まえ、さらに新たな調査を行なったうえで検証を行った。
|