本研究の目的は、急激なグローバル化が進行するニセコ地区(後志管内倶知安町・ニセコ町)における地域方言の変容の様相について、従来の計量的分析にエスノグラフィー的方法論(質的分析)を導入し、グローバル化がもたらす生活変化に対する住民の意識や態度の把握を重要軸としながら、言語変化研究の普遍的テーマである「変化の社会的動因」を明らかにすることにある。 調査初年度である本年度は、以下の4点に重きを置き調査活動を行った。 1. ニセコ地区(倶知安町・ニセコ町)の入念な地域研究 入植の歴史など当該地区の形成および変遷に関する情報を収集。また、町役場での取材を通して人口統計資料に基づく住民編成の変化(生え抜き、外地からの移住者、外国人)、住民からの直接的な聞き取りに基づく地域社会の変化の様子やそれに対する住民の意識などに関する情報を収集した。 2. ニセコ地区におけるネットワーク作り 倶知安町およびニセコ町、それぞれの調査地において、調査協力者との仲介役を担ってもらえる公的機関(公民館、体育館、学校、教育委員会、商工会議所など)、および特定の地域住民(NPO団体関連、地域ボランティア参加者など)からのサポートを受けることができ、調査は順調に進んだ。次年度以降も継続し、調査協力者との単発の接触に終わる調査ではなく、可能な限りで各人の日常生活に密着した調査を行っていく予定である。 3. 住民の自然発生的相互作用の収集 年度当初の計画では、住民間での自然発生的相互作用(会話、雑談など)を収集する予定であったが、当該活動は調査地での人脈がより確固となった段階で、次年度以降に行うことにした。 4. ニセコ地区方言に関する面接調査 初年度は生え抜き住民のみを調査対象とし、結果的に16名の被験者との面接調査、語彙・文法アンケート調査を完了した。次年度以降はさらに規模を拡張し、年代・性別・居住地・社会生活等の面からバランスのとれた資料を得るつもりである。
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