平成21年度「研究実施計画」には、(1)文学研究における「写生」研究のまとめ、(2)最新の「役割語」研究の確認、(3)「役割語」と「写生文」のシンポジウムの開催、を挙げた。 まず、(1)については、予想以上に「写生」についての説が多様であり、研究を進めつつも、まとめるに至らなかった。さらに「写生」についての専門家からの意見の聴取が必要と考え、(3)のシンポの内容も変更した。 (2)については、7月25日に愛媛大学において、第3回の「愛媛大学写生文研究会」を開催し、講師として「役割語」研究の提唱者である金水敏氏(大阪大学大学院教授)にご講演いただき、その後レクチャーを受けた。金水氏の講演題目は「写生(文)、言文一致体と子規・漱石」で、「写生」、写生文と言文一致体との関係、その日本語史における意義についての講演だった。 (3)については、(1)で触れたように、なお「写生」論についての研究の不足を感じ、俳句評論で活躍中の俳人関悦史氏にお出でいただき、氏の「写生」論、写生文論をうかがった。これは、2月27日に第4回「愛媛大学写生文研究会」として実施し、俳諧研究の塩崎俊彦氏(高知大学教授)、子規研究の青木亮人氏(同志社大学講師)にも加わっていただいて、「写生」論についてのミニシンポジウムとした。若手俳人の神野沙希氏、谷さやん氏も参加してくださり、活発な討論が行われた。討論を踏まえ、関氏には、あらためて「写生」論の執筆を依頼した。
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