外航船に乗り組み英語を使って船を動かす海技士となるためには、単に英語母語話者が発音するスタンダードな英語ばかりでなく、非英語母語話者が使う様々な訛りに対応できなければならない。本研究の最大の目的は、このように多様な第一言語を背景に持つ話者が発音した海事英語の音声データベースを作成して、これを世界に公開するとともに、イギリス英語・アメリカ英語という代表的なアクセントばかりでなく、非英語母語話者によるスピーチの録音サンプルを聞きながら、海事英語の単語を学習することができるソフトウェアを開発することである。 この目的に向け、平成22年度には日本人(海外の学習者にとっては、日本人英語も立派な訛り)及び韓国人訛りの英語を録音し、これも加えて世界27カ国の海事英語のサンプルをネット上に公開した。(http://www2.kaiyodai.ac.jp/~takagi/pweb/wme.htm)この成果は、IMEC (International Maritime English Conference:世界海事英語会議)のエジプトにおける学会でも発表した。 日本人船員が最も多く触れるフィリピン訛りと中国語訛りについては、これに詳しい音声学的分析を加え、同時に英語母語話者による意見も求めた。これは日本語話者による訛りの判断と、英語母語話者による訛りの判断に違いがあることを考慮したもので、日本語話者にとって非常に目立つフィリピン人の/f/を/p/と発音する習慣が、英語母語話者にとってはそれほど目立たなかったり、日本語話者にとって比較的気にならないアクセントの違いが、単語の認識に影響を与えることも判明した。
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