平成22年度は、インディアン再組織法(1934年)、連邦管理終結宣言(1953年)以降、ノーザン・シャイアンが保留地土地喪失の危機にどのように対応したのかを把握すること主眼に、米国モンタナ州ノーザン・シャイアン保留地地等で現地調査を行った。本年度調査研究からは次の3点が明らかとなった。1)インディアン再組織法に則った部族自治初期においては、「土地保全」は部族政策の最優先課題となっておらず、1940年代には経済的困窮から脱するため、内務省に「連邦政府認定部族」のステイタス末梢(部族終結)を申し入れ、エネルギー開発企業への土地譲渡が模索された。2)連邦政府管理終結政策下、インディアン局は1957年貴重な水源を有する保留地内土地60区画の売却を強硬に推し進め、部族政府の土地買い戻しのための資金調達を積極的に阻止した。部族はアメリカ・インディアン問題協会の助力を得て、土地買い戻しに当たった。3)以降、部族政府は1959年に土地分割譲渡禁止計画、1962年に部族土地再購入計画を導入し、非部族メンバーへの土地譲渡の防止、リース契約解除を推し進めた。また、土地統合計画を政策の柱とし、部族として牧畜事業に取り組むことで保留地内土地の保全と経済的自立の両立を目指した。 本年度研究の成果は、20世紀における部族主権が、部族自治近代化を強要する再組織法と、同化を強要する連邦管理終結政策を経験するなかで確立されてきた、その詳細な過程を明らかにした点にある。この過程にあってノーザン・シャイアンが、保留地を「祖先の犠牲によって得られた故郷の土地」と見なす部族の集合的記憶による「保留地」解釈を、部族土地政策に反映させるとともに、外部支援団体、政府政策関係者に向けても発信した様が明らかとなった。
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