研究課題/領域番号 |
21652069
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
水野 勲 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (50209764)
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研究分担者 |
吉岡 由希子 目白大学, ビジネス社会学科, 講師 (10433872)
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キーワード | 地図の力 / 匿名性 / GIS / パネル調査 / ライフヒストリー / 空間集計 / 市民参加 / 場所記述 |
研究概要 |
近年では、ライフヒストリーの聞き取り調査、ランダムサンプリングによる大量個人データ、マイノリティなど社会的弱者の調査といった、地図と匿名性が対立する質的調査がさかんになっている。最終年度となる本年度は、(1)小地域統計の地図化におけるマイノリティ集団の問題、(2)パネルデータの地域的代表性の問題、(3)小説にみられる地理的記述(地図表記なし)の可能性について、それぞれ研究を行い、地図と匿名性に関する具体的な課題を検討した。 今年度の研究成果は、以下の通りである。(1)東京23区の災害リスク空間を国勢調査の小地域統計によって分析するにあたり、単身高齢者世帯率、5年以内移動者率、外国人比率、昼夜間人口比率の4変数を用いたが、これらの小地域ごとの地図化には一定の問題があり、多変量解析などの総合化が必要であること、(2)パネルデータは個人のプライバシーの集合体であるため、ソウル25区という単位であってもその地図化には注意が必要であり、他方、個人データを区ごとに集計した数量の地図化が何を表しているかという社会地区分析での課題があること、(3)小説はフィクションであっても、現実の地名が喚起する場所イメージが有効に用いられ、これをライフヒストリーの記述に応用することは有意義であること、などである。 今後に取り組むべき課題として、高齢者や外国人などのマイノリティの個人化された地図作成、地理学研究における統計的推測の方法論的課題の検討、ライフヒストリー調査とイメージマップ作成があることがわかった。
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