日本では、身近な動植物や道具類は、霊魂を宿すとされ、古くから生き物に対する供養が行なわれてきた。人間ではないものへの供養習俗は、仏教的アニミズムに彩られた日本独自の動物観や生命観を映すものとして注目され研究されてきたが、魚介類への供養は、断片的に紹介されるだけだった。そこで本研究では、水棲生物に絞り、供養碑の全国的分布や建立背景について調査をした。その結果、全国に水棲生物を祀った碑は約1300基あり、近代以降により盛んに建立されるようになったことがわかった。明治以降の供養碑の増加は、供養主体や供養対象、建立契機の多様化とともに進むが、その過程は、日本の近代水産業の発展過程を映している。
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