まず第1に、初年度に刑事施設で行った「知的障害者を含む再犯以上の精神障害受刑者」について、データの解析を行った。矯正統計等公表されているデータと比較すると、出所後の引受の困難さ、刑務作業の困難さ(休養等の多さ)、服薬率の高さが明らかであり、これにより仮釈放にはならずに満期釈放になっており、つまり保護観察が付されないことによって、引受等がうまくいかず支援の手が行き届かないことが多いことが予想され、それによって医療や福祉とのつながりが生まれず、再犯につながるという悪循環が見て取れた。また、精神保健福祉法上26条の矯正局長の通報状況をみると、前刑時にも多くの場合通報されているケースも多くはなく、さらに他の統計からも調査の後診察にはつながっていないことが分かった。これは、通報や調査時は出所直前あるいは直後のため、症状や病状が比較的落ち着いており、診察あるいは入院等医療機関につながらないことを意味しているように思われる。その後に再犯が繰り返されている現状から考えると、なんらかの形での治療を含めて医療・福祉機関とを結びつけることが肝要であり、調査の時期や調査主体・調査方法について、専門的知識と技術を用いて振り分けをし、社会復帰につながるような制度運用上の工夫の余地があるように思われる。調査したうち、特に群馬県の方式が非常に有効であるように思われた。 第2に、精神障害受刑者収容機関である医療刑務所を含めた刑事施設や、知的障害者を積極的に受け入れている更生保護施設へ訪問調査を行い、処遇の実態や、受入れの際のノウハウやスキル等を調査した。身体的病状の悪化した精神障害受刑者であっても周囲の医療機関の受入れが困難で、刑事施設が医療・福祉施設化しており、社会復帰に向けて刑事施設における処遇と医療・福祉的支援が必要であろう。その中で特別調整、保護観察所や地域生活定着支援センター等を中心とした福祉との連携は新たな試みとして注目すべきであるが、その中で、その試みが帰住先のない人を中心としているため、制度から外れる対象者も多いことが、今後の課題として考えられた。
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