昨年度調査を行うことができなかったエジプト及びドバイに調査に赴くことを計画していたが、当該国における政情不安のため、調査が不可能になった。そこで、イスラム金融及びイスラム法の研究が活発に行なわれているイギリスのSOASに赴き、資料を収集するとともに、シンガポールを訪問し、インタビューを行い、資料を収集した。また、イスラム会計との関連では、オーストラリアで開催されたAsian-OceanianStandard-SettersGroup(AOSSG)の大会に出席し、マレーシア会計基準委員会が中心となって行っているイスラム会計に関する研究についての情報を収集した。 このような研究の結果、ドバイ、インドネシア、パキスタン、南アフリカおよびシリアは、イスラム金融について、特別な財務報告基準を有しており、ドバイ、シリアおよび南アフリカは、イスラム金融会計・監査基準機構(AAOIFI)が公表している会計基準を採用しているのに対し、パキスタンは、AAOIFIの会計基準を参考にしてはいるものの、ムラバーハについての会計基準は独自に開発し、イジャーラに関する会計基準は国際会計基準第17号を修正したものとなっている。なお、インドネシアにおいては、AAOIFIの会計基準に依存せずに、シャリア会計基準審議会が独自に会計基準を開発している。ただ、これらの国々においては、イスラミック・デリバティブに関する会計基準は現在のところ公表されておらず、ヘッジ会計やイスラミック・デリバティブに関する会計基準については、マレーシアにおいて検討が進められているにとどまっていることが判明した(もっとも、マレーシアにおいても、現時点では、スクーク、利益分配契約およびタカフルについてディスカッション・ペーパーが公表されているにとどまる)。
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