グローバル・ハウスホールディング(越境する家庭形成、GHH)を、社会科学の分析対象として確立することを目的とする本研究では、「ハウルホールド=家庭」つまり、概念的に血縁家族よりも広く、その射程に、国境を越える家事手伝い、介護士、乳母、オーペア、国際養子縁組・結婚などを収めている単位を分析の中心に据えた。 初年度の目標は、本プロジェクトの基礎を固め、ケア労働の実証研究に目途をつけることであった。具体的には、文献を整理し、調査を開始し、研究会を組織し、作業ペーパーを書くことにあった。 まず第1に、論点の整理と文献のサーヴェイを行った。特に、今年は、ヨーロッパにおける資料収集に努め、とりわけケア労働の国際化の先進国ともいえるイタリアに絞って資料を集めた。 第2に、欧州大学院大学において、ケア労働の国際化や移民に関する研究会を見出し、メンバーと議論を試みた。ここで既存の先端的研究にふれることができたのは大きい。 第3に、ケア労働者の受け入れ国の現地調査を行った。地中海諸国の移民労働研究の拠点であるイタリアの欧州大学研究所を足場とし、ヨーロッパにおけるケア労働者の受け入れ国、とりわけイタリアの現地調査を、トスカーナ州プラート市を事例に2度ほど試みた。 第4に、ワーキング・ペーパーを英文で執筆した。作業素稿をこの段階で執筆し、次年度における関係者に限定的に配布するためである。これは、欧州大学院大学のワーキング・ペーパーとして発表を予定している。
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