研究課題
ある財の一消費者にとっての価値が他の消費者の消費行動に依存するような場合にその財にはネットワーク効果があるといい、最終的な購入者の集合をネットワークという。たとえば通信機器は多くの消費者が消費(使用)すればするほど、すなわちネットワークが大きければ大きいほどその価値が高くなる。他にも電気自動車やパソコンのオペレーティングシステム、工業団地など、ネットワーク効果を持つ財の種類は数多い。このような財が独占的に供給される場合の売り手の最適な販売戦略とはどのようなものであろうか?本年度の研究はこの問題に対して以下のような分析を行った。それぞれの財の買い手にとっての財の価値は彼自身のタイプと、ネットワークの大きさに依存するとする。売り手にとってのメカニズムとはそれぞれの買い手から収集されたタイプの情報をもとにネットワークと価格の2つを決定する仕組みである。このようなメカニズムの中で形成されるネットワークのみによって価格が決定されるものにごで価格提示メカニズムと呼ぶ)は、そうでないメカニズムに比べて信頼性が高く、実際にも用いられる機会が多い。そのような価格提示メカニズムの中で売り手の収益を最大にするものについてその特徴付けを行った。それによると最適な価格提示メカニズムとはネットワークが大きいほどより低いタイプの購入者でも購入が可能な価格を設定し、しかも参加制約のもとでネットワークのサイズを最大化するようなものであることが示された。既存研究では売り手の利益についての分析はほとんどなく、またすべて買い手の意思決定が相互に独立であると仮定している。したがって本研究で得られた知見は全く新しく、ネットワーク効果を持つ財の供給における基本的な原則の発見と考えられる。
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Games and Economic Behavior
巻: 70 ページ: 242-260
ISER Discussion Paper, Osaka University
http://www.iser.osaka-u.ac.ip/~aoyagi