本研究の目的は、RFIDの技術を活用して個々の観光客の行動を時間・空間的に記録する「旅日記カード・システム」と呼ぶ新調査方法を開発し、これを用いれば、これまで精確かつ網羅的に得ることが出来なかった観光客の移動行動や消費行動を、観光客のプライバシーを守りながら把握することが出来ることを検証しようとするものである。 本研究においては、最近一般消費者に急速な普及が見られるスマートフォンのもつ高度なIT機能、位置情報機能などを活用したシステムとして開発することとした。そこで、1年目には、特に要となる位置情報取得技術でスマートフォンに適用できる方式を検討した結果、RSSIという無線電波の強度を測定して位置を割り出す方式が精度が高く、屋内外を問わず優れているという結論を得た。そこで、二年目においては、WiFiセンサーの働きを利用したRSSI方式のアプリケーション開発に専念して、その端末側のアプリケーション開発にこぎつけ、併せて、より簡易だが端末機器単独でも機能するGPS方式アプリケーションについても副次的に開発を行った。 三年目のこの一年においては、まず第一に、本命であるRSSI方式のシステム完成にこぎつけるべく、移動端末から発信されるビーコン・データ牽受信しその位置情報を端末に返すサーバーを入手したので、繰り返し送受信実験と前年度に開発した端末組み込みアプリケーショ'ンの改良に努めた。しかし、用いた市販システムとの相性がよくないのか、端末側のなお残るバグのせいか、これまでに安定した正確なデータ取得には至っていない。また、今後RSSIを適用するとしても、研究者がその調査対i象どしようとしていた地元の観光地などでは、WiFi網が十分に張り巡らされた環境にはまだないことなども分ってきた。それもあるいは不調の一因となることも考えておく必要がある。 第二に、他方で、端末機器単体でも機能するGPS方式のアプリケーションはスムーズに機能し、これを用いてキャンパス内での位置データ収集調査を行うことができた。ただし、こちらは、位置測定精度があまり高くないのと、屋内や建物など遮蔽物の陰などではほとんど機能しないため、「旅日記カード」における観光客の経済行動情報を推計するデータ収集作業にはやはり適用できなかった。
|