本研究では、GISデータを使った空間分析と、社会ネットワークデータを使ったネットワーク分析を初めて熱帯伝統農業に応用し、熱帯農業研究の新しい研究領域の開拓を試みる。ペルー・アマゾンで独自に収集したデータを用いて、空間・ネットワークデータを農地・家計調査データと統合することで、新しい分析体系を提示する。1年目の今年度は、研究計画に従い、データベース作成(農地・家計調査、社会ネットワーク、空間)、ネットワーク分析、空間分析、論文執筆を行った。基本的データベースの作成は完了し、複数の研究テーマに沿って様々な分析を行った。特に、次の3つに関して論文を執筆した。(1)家計調査データに基づいたこれまでの研究成果をまとめる形で、漁労が持つリスク対応の役割について、漁業研究者向けに整理した。(2)一連の空間分析の第一段階として、農地の規模・立地・利用(耕作、樹木、休耕)の変遷を分析し、初期の農地規模がその後の立地および利用を強く決定するという、貧困の罠と森林保全・生物多様性保護との連関についての新しい知見を得ることができた。成果は、コーネル大学(アメリカ)で開催されたワークショップで発表された。(3)森林伐採で投入される共同労働(男性)に関してネットワーク構造ならびに決定要因を分析し、母系血族の重要性等の新しい知見を得た。地理学において、方法論的にも顕著な貢献となった。(1)は国際学術雑誌で査読中、(2)、(3)は平成22年度に国際学術雑誌に投稿予定である。
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