不動産市場の詳細な分析を行い、分析手法の精緻化方法や不動産政策への示唆などを得た。今年度は特に共同住宅における合意形成のあり方、住宅特性と距離との関係の分析、空間情報探索を市場細分化を通して行う手法の検討などを行った。 マンションの建替分析モデルでは、権利者の便益に相関があるときのマンション建替決議に際しての多数決ルールのあり方と社会損失量の計量化を行った。過剰損失補償を行う場合でも単純多数決ルールが優れていること、権利者便益の相関が高いほどより厳しい特別多数決にともなう社会損失量が大きくなること、権利者数は最適多数決原理に影響しないことなどが判明した。現行法制下の4/5特別多数決原理はより割合の小さな単純多数決に近い方式に改正すべきことが示唆された。 住宅特性と距離との関係の分析では、住宅特性間の類似度と空間的な距離の関係を世田谷区と青葉区の取引事例をもとに分析した。通常に想定されているような似た物件が近くにあるというわけではないことが示された。非常に類似した物件との平均的な距離は世田谷区では3500m以上、青葉区では1000m以上であった。このため住宅市場の細分化においては、距離だけでなく、立地特性や物件特性などを詳細に検討しなければならないことがわかる。 空間情報探索モデルにおいては、適切な地域変数が欠けているとヘドニック回帰において誤差が大きくなり、いくつかの空間変数を導入することで精度が大きく改善することが期待される。そのような空間変数を探索する方法を検討するために、東京の住宅市場分析を行った。住宅市場の細分化から、空間的な傾向をっかみ、適切な空間変数を探索した。 以上の分析の他、密集市街地の新たな再生方法を提言した。
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