2010(平成22)年度も日本の商品先物市場は厳しい状況が続いた。研究代表者の地元にあった中部大阪商品取引所は、取引高の低迷から2011年1月に解散した。これに関して、「中部大阪商品取引所の解散について」(『中日新聞』2010年6月19日)、「中部大阪商取 解散へ 来年1月に取引休止」(『読売新聞』2010年06月19日)、等の記事において、研究代表者の分析コメントが紹介されている。こうしたことは本研究プロジェクトの社会的な重要性を示すものである。 一般啓蒙を図るために、積極的に研究成果を発信した。本年度は、インターネット媒体の『オーバルネクスト』において、「経済産業省の商品版(工業品先物市場)アクションプログラムへの期待」(2010年4月14日)、「商品取引業界人も希望を持とう」(2010年5月14日)、「商品市況と株式市況の連動性の高まり一非連動性のある「商品」を探す必要性一」(2010年6月10日)、「中部大阪商品取引所の解散」(2010年7月2日)、「新成長戦略・アジアのメインマーケットを目指す戦略はあるのか」(2010年8月11日)、「商品ファンドの市場縮小」(2010年10月14日)などを配信した。 一方、査読付き論文として、Modern Economyに単著論文がアクセプトされた。この論文では、日本の株式市場と商品先物市場のデータを使って、長期間における連動性の強さの変化を分析した。その結果、2006年頃までは連動性はほとんどなく、商品先物市場が代替的投資先としての適格性を有していたが、2008年秋以降急速に両者の連動性が増していることがわかった。こうした変化の理由については今後の重要な研究課題である。 また、「我が国における商品を利用した投資の可能性について」というタイトルで、2010年度第1回商品取引所問題研究会(2010年10月22日)において、商品ETFに関する試論的な報告を行った。
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