一般投資家が商品先物を投資手段として利用できるようにするために、集団的投資スキームの役割が重要であると考えられることから、家森信善「わが国のコモディティ投資信託とETF-新しいコモディティ投資ビークルの現状と課題-」(『彦根論叢』第390号2012年1月)を発表した。商品先物市場での直接取引よりも集団的な投資スキームを使うことの方が、個人の資産形成手段としては望ましいと考えられている。しかし、実際には、コモディティ投資の集団的な投資スキームとして期待された商品ファンドは、ほとんど活用されなくなった。他方、コモディティを対象にした投資信託はグローバル危機までは順調に伸びていた。危機後の暴落で資産額は大きく減少しているが、いったん落ち込んだ後は落ち着いており、コモディティを対象にした投資信託は定着してきているといえる。近年、急速に多様化が進んでいるコモディティETFに大きな期待が寄せられている。規制の緩和により、種類の多様化は相当に進んでいるが、投資家の参加は限られており、特に新規のETFには取引がきわめて低調な銘柄が少なくない。せっかくの多様な投資機会が幅広く利用できるようにするには、投資家への周知が大きな課題になると考えられる。もともとコモディティ投資信託やETFについては、証券会社の販売員にコモディティの知識が乏しく、また、(とくに、手数料の安いETFは)販売妙味にかけるため、積極的に売られにくいという問題が指摘されている。(販売ネットワークの不足という)商品ファンドの失敗の教訓を生かすためにも、(適切なコンプライアンスを前提した)販売面での態勢の強化が必要と考えられる。以上のように商品先物の金融商品としての側面を分析したほかに、情報開示の必要性をイベントスタディによって確認する研究の成果、および、代替的投資先としての商品先物の魅力の再検討を行った研究の成果を発表した。
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