研究課題
本研究は、前近代の比較経済史研究を基盤に、開発途上の特定地域を拠点として、現実的実際的な活動を展開する。特に水環境と水文化に注目し、安全な水の確保、水災害に強い社会の構築、同時に緑の革命以降常識となっている環境に配慮した社会システムの整備を、バングラデシュのグラムバングラというNGOが活躍してきた一村落を舞台に展開する。一つの村落をモデルケースとして様々な実験的な試みを行う。この事業の本格的展開のための準備を行うことが目的である。研究成果としては、第一に、比較研究の基盤として、フライブルク大学自然地理学研究所が現在進めているライン川上流の仏独境界線における洪水の歴史的地理学的比較研究の成果を取り入れ、洪水対策への多様な文化的対応のあり方について分析できる資料状況を確認した。また、ライン川上流域の現地視察を通じて、さらにバングラデシュを含めて他地域との比較研究における分析視角を整理した。第二に、バングラデシュのNGO組織であり、カンチャンプールを活動の場とする教育研究機関であるグラムバングラと、香川大学と交流協定を締結するに至った。グラムバングラの議長であるイスラム・カーン博士を香川大学に招き、また、他の地域研究者を香川大学に招き国際研究集会を開催した。第三として、連携機関との具体的な研究内容は以下の四つに分類している。(1)上水の安定供給のための世界各地での政策対応についての歴史学的分析(=水の供給に関する歴史分析)(2)水に関連する災害対策に関する日本と世界の経験の分析(=水害とその対策に関する歴史分析)(3)バングラデシュの水害と水文学的システムに関する地理学的分析(=水害と水利システムに関する地理分析)(4)持続可能で現実的な政策実現のための教育システムの構築(=国際的教育システム構築)。この中で本年度は、主に(2)そして(3)に関する共同研究を開始した。
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Demographic Responses to Economic and Environmental Crises. Satomi Kurosu, Tommy Bengtsson and Cameron Campbell(ed.)
ページ: 239-251