本研究は、前近代の比較経済史研究を基盤に、開発途上の特定地域を拠点として、現実的実際的な活動を展開することを目的としている。バングラデシュのグラムバングラというNGOが活躍してきた一村落を舞台に、一つの村落をモデルケースとして、この事業の本格的展開のための準備を行うことが目的である。 本年度の研究成果としては、第1に、環境史研究に関して、台北で開催された東アジア環境史協会主催の第1回東アジア環境史学会において報告を行い、さらに第2に、平成22年に組織化した「環境史研究会」のワークショップを継続的に開催し、本年度、平成24年3月には規模の大きな環境史シンポジウムを開催した。また第3に、バングラデシュのNGO組織であり、カンチャンプールを活動の場とする教育研究機関であるグラムバングラと香川大学とコンソーシアム型の交流協定をさらに発展させるべく現地を訪問し今後の共同研究に関する計画を再考した。 とりわけ、この数年顕著な労働市場のグローバル化現象は、バングラデシュの村落社会にも決定的な影響を与えていることが確認され、コミュニティ・ベースの地域開発のあり方については、当初想定した以上のテンポで国際的な知のネットワーク化の必要性が明らかとなった。そこで第4に、準備を進めていた「ジオ・コミュニケーション」ニュースレターおよびワーキングペーパーのISSN取得を行い、より充実した情報公開が可能なようにホームページの整備を行った。 また、Ushahidiなど新たなメディアの活用も試用的に進め、グラムバングラとのテレビ会議システムの構築に関する準備も行った。日本で構築した「環境史研究会」もメイリングリストの登録が71名を越え、より充実した知のネットワーク化が推進されつつあり、さらに今後、バングラデシュなどの開発途上国との連携が期待できる基礎固めを行うことができた。
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