1.概要 中小企業の資金調達を円滑に進めるために、従来の有形資産を担保にした短期融資だけでなく、技術やアイデア、経営者のマネジメントなどを評価して長期に投融資するシステムの検討が必要である。本研究では特に、中小企業の私募債を中長期金融のツールとして活用する方策を検討している。そのためには、まず、中小企業金融の実態を把握する必要があり、研究初年度である21年度は、銀行や信用保証協会などの金融機関に対するヒアリング、および、私募債発行企業に対するアンケート調査を実施した。 2.金融機関に対するヒアリング 金融機関に対するヒアリング先は、都市銀行、地方銀行、信用金庫や信用保証協会、政府系の金融機関など10機関である。それによると総じてリレーションシップバンキングや無形資産の評価力の強化に対する必要性を感じていたが、金融機関の規模や地域、顧客ターゲット層(取引先の規模等)によって、私募債取扱に違いが見られた。これらのヒアリング内容をもとに、金融機関に対するアンケート調査の内容を検討中である。 3.私募債発行企業に対するアンケート調査 私募債発行企業の実態を把握するために、金融機関のヒアリング結果等を踏まえ調査票を作成し、私募債発行企業(約1500社)に対しアンケート調査(調査期間は2010年1月~2月末まで)を実施した。アンケートでは、私募債の発行回数や金額、私募債の期間、資金の調達目的、目的の達成度、負債の短期・長期の割合、金融機関に評価された項目、無形資産の説明状況や説明の困難度合いなどについて、多くの有効回答が得られた。現在、本アンケートデータを用いて統計分析中である。
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