研究課題
日本酒および日本酒の事業システムの基礎的な知識、および産地を形成してきた歴史的・社会的背景を整理するため、上村雅洋和歌山大学教授および国税庁の職員の方々にインタビュー調査を行った。その結果、多くの資料をいただくと同時に、近年になって杜氏と蔵元の関係が変化していること、および酒造における杜氏の役割も変化していることが明らかになった。一般的傾向として、酒造における杜氏の重要性は低下しているようである。これは、近年の技術革新の影響も大きい。また、杜氏と蔵元の関係性を調査するため、丹波杜氏へのインタビュー調査も行った。その結果、杜氏と蔵元の関係だけでなく、杜氏同士の関係性、杜氏と酒造仲間との関係の重要性が明らかになった。産地調査の手始めとして、南部杜氏組合へのインタビュー調査も並行して行い、得られた情報を交換するための研究会を2回開催した。その結果、産地と杜氏の関係は近年大きく変化し、かなり広範囲にわたって杜氏の活動領域が広がっている一方で、杜氏の人口は年々減少していることが明らかになった。今年度は、さらに調査対象を広げると同時に、定量研究ならびに麹屋との関係へと調査の幅を広げ、ディスカッション・ペーパーの作成や研究会での発表を始め、これまでの知見を整理していく予定である。