研究課題/領域番号 |
21653046
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
松戸 庸子 南山大学, 外国語学部, 教授 (30183106)
|
研究分担者 |
松戸 武彦 南山大学, 総合政策学部, 教授 (10165839)
浜本 篤史 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究所, 准教授 (80457928)
|
キーワード | 陳情 / 行政拘禁 / 労働矯正 / 紛争処理 / 不服申立 / 社会的統合 / パターナリズム / 行政処罰 |
研究概要 |
本年度は現地調査を北京市内で3回実施した。残念ながらアンケート調査を実施できる見込みが無くなったので、主にヒアリングの方法で10名の陳情者から実情に関する聴き取りを行った。また北京の幾つかの中央機関の陳情窓口付近の様子を観察した。並行して、理論面では「陳情-労働矯正(上〓〓教)研究の第一人者である于建〓教授の所論の理解に努めた。 中国の陳情者研究に関して本研究のような方法を使った実証的研究はほかには皆無であろう。聴き取りも3回経験すると、陳情者との接触や初対面で彼らから口頭で情報を得るための良きラポール形成の努力や方法にも長けてきた。また行くたび毎に陳情者を減らすための行政側の対抗手段を観察することもできた。本研究が入手した一次データは極めて貴重であり、近い将来に資料集として邦訳にしてまとめたいと思っている。 研究成果としては「陳情-労働矯正」のケーススタディを通じて、合法的な「信訪制度」が現実の運用過程で変質し、陳情者の人権侵犯という逆説を産み出すことに関する理論化の基礎枠組みがつかめた。 さらに、(1)行政拘禁の頻発、(2)体制改革に伴う弱者の切捨てと独自の救済方法、(3)司法以外の紛争処理や不服申立のチャネル化、(4)中央権力と地方政府のせめぎ合い、(5)行政官僚制の病理の持続、(6)社会的統合としてのパターナリズムの持続、(7)行政処罰の肥大、(8)中国社会主義の神話の形成、などの視点が得られた。
|