研究課題/領域番号 |
21653046
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
松戸 庸子 南山大学, 外国語学部, 教授 (30183106)
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研究分担者 |
松戸 武彦 南山大学, 総合政策学部, 教授 (10165839)
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キーワード | 労働紛争と陳情 / ダム移民と陳情 / 陳情狩り / 調停型裁定 / ピエテート / 大衆路線 / 支配の正当性 / 青包天カリスマ |
研究概要 |
今年度の主な研究目的は、過去3年間に入手した調査資料(ヒアリングは合計で全部で20名)の整理・予備的なまとめと一部成果の印刷である。また、結果的には今年度は首尾よく9名もの陳情者から聞き取りを行うこともできた。 前者は調査報告と資料の邦訳で、一部の作業は終えて報告書を作成した。その執筆者は松戸庸子のほか、松戸武彦(労働争議に関わる陳情)、連携研究者である浜本篤史(名古屋市立大学:日中比較の視点からダム建設による強制立退きケース分析)、また中国側研究協力者である応星(中国法政大学:ダム建設による強制立退き者の実証研究)である。それぞれが実施した聞き取り調査の整理と分析を行って、調査報告書『中国における陳情行動に関する実証的研究』(照会先:南山大学外国語学部アジア学科・松戸庸子宛)にまとめた。 一方、松戸庸子は「信訪研究会」(毛里和子早稲田大学名誉教授が代表)の一員として、法学者や政治学者との研究交流を進め、研究成果は今年6月に上梓が予定されている毛里和子との共編著に掲載される「信訪制度のパラドクスと政治社会学的インプリケーション」として発表する。 社会学的視点に立つ本研究は、上記論文の中で、(1)信訪制度と実態との乖離とその要因、(2)当局による陳情者拘束やそれ纏わる問題性を分析し、(3)それでも権利侵害や紛争を抱えた庶民が「司法」よりも「信訪制度」を選好するという実態から、他方で統治サイドもそれを「信訪条例」改正という形で制度を存続させた点に注目した。この信訪/陳情行為が、実は共産党統治のメカニズムの根源にある「大衆路線」や長い歴史に裏付けられたこの国の民衆の法意識(調停型裁定の選好)と親和して、「支配の正当性意識」の再生産に貢献しているという視点を構築できた。
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