本研究では、戦後沖縄の総合雑誌(知識人向けの思想誌・学術誌を含む)を可能な限り洗い出し、そこにおける戦争観の変容や位相差を検証することを目的としている。戦後沖縄の雑誌メディアについては、これまでに系統的な整理すらなされていない。本研究は、沖縄戦後雑誌史という未開拓の領域に踏み込みながら、そこにおける戦争観の変容やねじれ、日本本土との差異を分析していこうとするものである。 そのうち、平成22年度は、以下のような作業を行った。 a. 『新沖縄文学』『琉大文学』といった1950年代後半~1960年代に刊行された雑誌にあたり、そこにおける戦争体験論について調査・分析を行った。 b. 琉球大学図書館、沖縄県立図書館、沖縄県立公文書館、法政大学沖縄文化研究所等で、戦後沖縄雑誌史(および関連する社会史)に関する資料収集を行った。 c. 上記の言説の対照項として、同時代の新聞資料や知識人の言説(戦争体験論に関する当時の思想書・文学書、広島・長崎の雑誌言説、知識人言説など)を入手し、検証を行った。 以上を通じて、戦争体験をめぐる沖縄輿論の変容プロセスと沖縄の総合雑誌(およびその要素を帯びた文芸誌)の発刊状況について、分析を行った。その成果としては、下記「11.研究発表」にあるもののほか、拙著『「断絶」と「継承」』(仮題・新曜社・2011年刊行予定)の第一部「戦後沖縄と戦争体験論の変容」として公にする予定である。 2011年度は、1970年代以降の雑誌およびそれ以前の沖縄本島や先島の雑誌にあたり、そこでの輿論生成機能を検証する予定である。
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