平成21年度は、1)虐待を行う親と児童の関係に関する評価手法の開発と、2)介入プログラムの開発について、以下のように取り組んだ。1)については、まず養育に問題の無い一般家庭の児童と親の相互作用時の親子のストレスを精神生理的な指標で測定を行う手法について検討を行った。その結果、親子の耳たぶの脈派を測定し、それをもとにした心拍変動(Heart rate viability)による自律神経評価の手法が負担が少なく行えることを確かめた。少数ながら予備研究を行い、親子で遊ぶ場面、見知らぬ他者が入るストレス場面、ストレス解除の場面における自律神経の変動が測定できることを確かめている。今後、健常群でのデータを積み重ねて測定手法を確立する。2)については虐待を行う親に対する心理教育プログラムのマニュアルを作成して、実際に児童相談所で試用して改良を行った。プログラム内容は、「親自身の親子関係の振り返りから親としての必要な関わりを考える」「子どもとよい関係を作る練習」親自身の認知行動のパターンを変える」などを扱うものとなった。プログラムを行った結果について親子関係の心理テストや行動観察をした結果、親の子どもの気持ちに対する感受性が高まり、管理的な態度が減っていた。現在は子どもと直接接しない場面でのロールプレイや手紙を書くなどのワークを行っているが、今後は親子同席場面での相互作用の指導に関しても扱っていく予定である。以上より、親子関係の測定方法と介入プログラムの準備が整ってきたため、これらを結びつけて、親子へのプログラムを行う前後や経過の中での、HRVおよび心理テストや行動観察による評価を行っていく予定である。最終的には、親子の相互作用を精神生理的指標と心理指標の両方から評価しながら親子関係を統合する手法を確立し、これを児童福祉施設児童が家庭復帰する際などに応用できるようにすることを目指す。
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