研究概要 |
本研究の目的は、(1)児童とその養育者の精神状態や相互作用について、心拍変動による精神生理評価と心理・行動評価をあわせた評価方法を確立すること,(2)親子関係を再構築する心理プログラムのマニュアル開発、その有効性を(1)の手法を利用して検討すること、である。 目的1については、2つの研究を行った。(研究1)親子関係評価において重要点を確かめるために、地域の学童または未就学児童をもつ親に対して調査を行った。未就学児童の親259名、就学児童の親415名のデータを分析し、親子関係の持ち方と親のストレス状態やその他の背景要因について調べた。その結果、ストレス症状を評価できる心理尺度(K6)で、ストレスが高いとされる親が4割以上存在すること、ストレスが強い親では子どもと関わりに自信がもてないことが確かめられた。また、子どもとの関わり方に関連する要因としては、子育てについて相談できる人の有無、配偶者との協力関係、子育ての情報を持てること、経済的心配がないことなどが挙げられた。(研究2)初年度に続き、より多くの事例(健常の親子や虐待を生じた親子)について、脈波を用いた心拍変動による自律神経評価および親子の関わりに関する質問紙を行ってデータを集積した。ビデオによる行動評価についてはその親のほめる言葉などの望ましい言葉かけと、非難する、命令するなどの望ましくない言葉かけについての数のカウントを中心に評価する方法を行っている。これらにより、総合的な親子関係評価の手法の確立を進めている。 目的2については、虐待傾向をもつ親に対する全8回の心理プグラムのマニュアルを作成し、これを実際に虐待事例に対して2クールこない、その前後で心理テストを行い、効果を検証している。まだ、親へのプログラムが中心で、親子同時への介入は小数例にと止まっている。また心拍変動による評価もこれからである。
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