認知症高齢者主体の個別アプローチを追求する、いわゆるパーソン・センタード・ケアの考え方が定着しつつある。しかしながら、パーソン・センタード・ケアに必要である、本人がこれまでに歩んできた生活歴やその人の個性を把握することは非常に困難であり、介護者主体のケアプランになりがちである。そこで、高齢者が健康時より、認知症を正しく理解し、予防にも努めながも、認知症になった場合に備えて自身のケアプラン(以下、認知症マイプランとする)を作成しておくことを「認知症準備教育」と位置づけて取り組みを開始した。初年度は認知症準備教育((1)認知症およびケアに関する知識の講義、(2)認知症予防の観点から認知トレーニング、(3)認知症マイプラン作成の3部構成)プログラムを作成し、実施、評価・修正をし、初回版プログラムを完成させることを目的とした。本年度は、市の広報を通じて参加者を募集し、11月に12名、1月に11名、計23名(平均年齢73.8±5.33歳、男性3名、女性20名)を対象とし2クール実施した。1回120分×4回(1週間に1回)を1クールとした。内容は、1日目:認知症の基礎知識、2日目:認知症予防トレーニング、3・4日目:認知症マイプラン作成と認知症予防トレーニングである。初日には、対象者の認知機能測定のため、時計描画テストおよび長谷川式簡易知能評価スケールを実施した。また、初日と最終日には自記式質問紙調査を実施した。1クール終了毎に、プログラムを見直し、修正を行い、初回版プログラムとして完成させた。講座修了後の参加者からは、「認知症の理解が深まった」「関心が高くなった」「予防を継続したい」「マイプラン作成は必要」等の意見がきかれた。さらに、全回参加者のうち、追跡調査の同意が得られた17名を対象に、3ヶ月おきに、予防トレーニングとともに認知症マイプランの確認、生活の変化の有無等の追跡調査を実施している。
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