研究概要 |
高齢者が健康時より、認知症を正しく理解し、予防にも努めながらも、認知症になった場合に備えて自身のケアプラン(以下、認知症マイプランとする)を作成しておくことを「認知症準備教育」として継続実施している。本年度は講座の評価をし,効果および今後の課題を明らかにすることを目的とした。平成21年度に講座を受講し,その後月1回のフォローアップ講座に参加しており,同意が得られた11名に対し面接調査を行い,質的に分析した。講座については、【学ぶ場ができた】、【認知症の見方が変わった】、【楽しみが増えた】、【回想する機会を得た】や、認知症マイプランを作成することで、【残したいものを形にできる】、【伝える手段として活用できる】と捉えており、【自分なりの認知症予防行動をとるようになった】、【主体者として講座に参加するようになった】といった行動の変化がみられていた。講座参加の継続を支えるものとしては、<仲間が大事>等の【サポートが受けられる】という思いがあった。一方で、<加齢に伴う機能の低下>等の【続けたい思いが妨げられる可能性】があげられた。また、認知症マイプラン作成において、<書くことへの拒否反応>、<人生の整理が難しい>等の【書きたいが書けない】や、<今の施設では活用が期待できない>といった【残す意義を見いだせない】といった今後の課題が明確になった。本講座は「学ぶ場」の提供となり、認知症の見方が変わったり、予防行動をとるようになったり等の変化がみられ、一定の効果があったと考える。一方で、参加の継続が妨げられる可能性および認知症マイプラン作成における課題に対しては、加齢に伴う機能の低下に配慮した講義内容の検討やサポートの実施、認知症マイプラン作成における代筆や言語化への手助け等の個別支援に加えて、利用者の思いを尊重したケアが可能となるような介護現場の質の向上の必要性が示唆された。
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