研究概要 |
本研究は,小中学校の教師の適切な児童生徒理解促進を主目的とし,それを基盤として教師の学級経営や生徒指導の改善をも支援するコンサルテーション・プログラムを開発する。本研究では,第一に教師個々人の児童生徒理解や推測のパターンをできる限り忠実に抽出する査定方法を開発する(目的A)。それによって,推測理解パターンの自覚化を促す資料を教師に提供する。第二には,教師が一般に用いている推測理解パターンを小中別・経験差別に抽出し,パターンの個人差をより明確にする基準を作成する(目的B)。第三に,査定結果を適切にフィードバックするオンライン化プログラムを,当研究グループが開発した暗黙の人格観検査をベースにして開発する(目的C)。第四に,検査者が教師とともに査定結果を検討していく過程を含めた推測理解パターン自覚化を支援する効果的なコンサルテーション・プログラムを開発する(目的D)。 当該年度は,教師の推測理解パターンの一般的特徴と個人差の検討(上記「研究目的」の目的Aと目的B)に着手した。小中学校の教師を中心とした33名の教師を対象に,児童生徒の推測理解パターンの一般的特徴を明らかにする目的で,児童生徒の性格特徴についての自由記述による資料を収集した(分析中)。さらに,上記33名中15名の教師に,暗黙の人格観検査をインターネット経由で実施し,推測理解パターンの一般的特徴ならびに個人差の予備的検討を行った。その結果,一般の人々の推測理解パターンと符合するものと,教師に特徴的な推測理解パターンおよび個人に特徴的な推測理解パターンと考えられるものとがほぼ同数認められ,教師用の個人差識別基準を新たに作成する必要性が示唆された。また,特徴的な推測理解パターンを示す教師についての事例的検討により,教師に既に自覚されている推測理解パターンを手がかりにした推測理解パターン全体の自覚化の可能性が示唆された。
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