研究概要 |
認知発達検査(含知能検査)の結果が教員や保護者にどのようにフィードバックされているかについて,その現状を調査した。すなわち,教育相談や巡回相談等の対象事例について,専門機関で認知発達検査を受けた場合に,どのようなフィードバックを受けたかを調べた。その結果,1.検査記録用紙の表紙(IQ等の数値が記載されているページ)のコピーを渡されることが多いこと,2.過半数においてこのコピーに基づく比較的平易な説明がなされていること,3.文章で書かれた所見が渡されることは比較的少ないことなどが明らかになった。検査結果をひとことぐらいしかフィードバックしなかった過去の状況から考えるとかなり進歩していると思われたが,形式的なフィードバックに留まっている場合も多いと考えられた。 現時点で問題とすべきことが2つ考えられた。1つは所見や説明に含まれる検査結果の解釈である。検査実施者において,検査は理解していても,認知発達や日常生活との関係は理解されていないと思われる点があり,検査実施者の技量により解釈の妥当性にかなり差があるように見受けられた。妥当な解釈をするために必要な理論的知識や実践的な考え方の一部について,「認知神経科学」誌の記事に記載した。もう1つの問題として,所見や説明と学校生活や就労支援との間に隔たりがおり,検査結果が実際の教育や支援に活用されにくい実情があると思われた。引き続きフィードバックの現状を調べるとともに,検査結果と日常生活を結びつける考え方を,誰にどのように伝えるべきかについて検討する必要がおる。
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