研究概要 |
認知者の基本表情認知に影響を与える顔の物理的特徴 表情カテゴリー判断データから項目反応理論によって求められた困難度(難しさ)と識別力(精度)という刺激の特徴を表す指標が表情画像のどのような物理的特徴と関連しているのかを調べるために表情カテゴリー判断実験と表情画像の物理的特徴の測定を実施した。 表情カテゴリー判断実験では,表情写真5種類(喜び,真顔,怒り,恐れ,悲しみ)を80msec提示し,表情カテゴリーの判断を求めた。実験参加者数は75名であった。実験によって得られた表情判断の正誤データを用い,喜び,怒り,恐れ,悲しみ表情ごとに項目反応理論によって項目パラメーター(困難度・識別力)を求めた。項目反応モデルに適合した刺激は喜び26枚,怒り64枚,恐れ28枚,悲しみ25枚であった。また,上記の刺激に関してFUTONシステムを利用して物理的特徴を測定し,主成分分析によって表情ごとの物理的な特徴に関する成分を抽出した。 表情の物理的特徴の成分を説明変数に,識別力と困難度を基準変数として重回帰分析を行った。その結果,喜びについては,顔の上部・下部の顕著さが困難度に関連した。怒りについては顔の凝集性が困難度と関連し,顔の上部・下部の顕著さが識別力に関連した。恐れについては表情の物理的特徴と困難度ならびに識別力との関連は見出されなかった。悲しみについては顔の凝集性が困難度と関連していた。 今後,実験参加者数を増やし,また驚き,嫌悪も含めて表情の物理的特徴と困難度と識別力との関連について詳細な検討も必要である。 本研究の成果の一部は中村・光藤(2011)で公表されている。
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