研究概要 |
重症心身障害児は中枢神経系の障害がもとで運動および知能に障害が生じている症候群である。身体が不自由であり脆弱であるため,医療的ケアはもとよりQOLをいかに高めるかが重要な課題となっている。しかし,重症心身障害児は言語や身体活動によって意思を伝えることが十分にできないため,自律神経系活動をもとに重症心身障害児の快-不快を客観的に評価することができれば,介護におけるQOL向上に役立てることができると考えた。平成21年度は,重症心身障害児の心電測定が可能であるのか,また行動観察との対応が可能であるのかの予備的検討を行った。大島分類の1~4に該当する重症心身障害児を対象とし,以下の測定・分析を進めている段階である。 (1) 介護時の自律神経系活動の測定 重症心身障害児の日常的な世話(介護)を行っている際の心電を測定し,心拍数の変化と介護行為との関連を検討した。着替え中の座位状態で心拍数の増加が認められたことから,生理的に覚醒しやすいことがわかった。 (2) 自律神経系活動の24時間測定 施設に入所している重症心身障害児を対象に,日中だけでなく睡眠も含む24時間の自律神経系活動測定を行った。事例数は少ないが,夜間には心拍数が減少し,低覚醒状態になることがわかった。 なお,以上の分析は心拍数をもとにしたもので自律神経系の覚醒状態がわかるだけである。快-不快の評価をするためには心拍数の周波数解析により高周波帯域(HL : 0.15-0.49Hz)と低周波帯域(LF : 0.05-0.15Hz)を抽出し,交感神経系指標(LF/HF)と副交感神経系指標(HF)を用いた検討を行う必要がある。そのため,時間精度の高いウェーブレット変換による周波数解析により行動観察との対応を検討可能であるかを探っている段階である。
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