統合失調症の予後に影響する要因として「治療アドヒアランス」、つまり「治療的介入を患者自らが肯定的に選択し、その実践に主体的に参画していく程度」が重要である。治療アドヒアランスは薬物治療だけではなく、心理社会的なリハビリテーション介入を効果的にするためにも重要な要因であり、そのためには介入早期からの高いアドヒアランスが期待される。本年度は結果の信頼性を高めるため、対象数を増やした上で再度木の下によるModified Grounded Theory Approach (M-GTA)用いた質的分析を用いて治療アドヒアランス要因についての仮説生成を試みた。Drug Attitude Inventory-30 (DAI-30) scoreが陽性で、The Schedule for Assessment of Insight (SAI-J)高い病識を示す(mean±S.D;19.8±0.4)統合失調症患者6名に対し、半構成的インタビューを含む、M-GTAを実施した。服薬および心理社会的リハビリテーションを合わせた治療アドヒアランス要因に関する概念生成を目的に、比較分析法を用いて分析した。結果、治療アドヒアランス要因として、本人の治療参加、薬と症状に関する理解、副作用の少ない効果的な治療薬がもたらす希望、医療に対する信頼、障害の受容、豊かな人的環境、経済基盤の安定、回復への希望、がカテゴリー候補として挙がり、一方で治療者への依存や医療不信、貧弱な人的環境が治療アドヒアランスを妨げると要因として考えられた。さらに、心理社会的なリハビリテーションに関する理解は、対象者間で少なからず相違がみられ、心理社会的リハビリテーションに関するアドヒアランスの尺度化、および共分散構造モデルの適用を行うには、この課題を解決する必要のあることが明らかとなった。
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