研究課題
本研究では難病患者ライフの記述方法を新しく提案することを目的とし、厚生心理学という新しい学問領域の創生を目指すものである。まず、国立新潟病院で療養中の筋ジストロフィー患者にQOL評価法のひとつであるSEIQOL (the Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life)を実施する試みを今年度も継続中である。この方法は半構造化面接法を内包しており、従来のQOL尺度とは異なり、患者が主体的に項目を生成することができる。本評価法を経時的に実施する(半年に1度程度)ことで患者の症状の変化やライフイベントの発生によるライフの変容を詳細に把握することが可能であり、今年度は継時的な検討も行った。10年度前期にナラティブ理論のBamberg教授(クラーク大学)が来日して立命大で講演・講義を行った。この機会を通じて、難病患者のライフをとらえる心理学のあり方について同教授と議論した。2010年8月の日本ブリーフサイコセラピー学会第20回大会(長崎)の大会シンポジウム「"ブリーフ"からみたセラピーの効果について」において「心理学及び心理療法における効果と効率の文脈」と題する発表を行い、心理学における効果概念や効率概念の功罪について検討を行った。2010年9月の第74回日本心理学会(大阪)では「医療・健康と心理学の新しい関係をめざして」と題するワークショップを開催し、従来の臨床心理学の枠組みに囚われることのない医療と心理学の関係について論じ、厚生心理学の意義についても検討した。また成果の公表に関して、2010年7月に昨年同様「日本学術振興会ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」企画を実施し小中学生に研究成果を伝えた。
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立命館人間科学研究
巻: 22 ページ: 73-86
Integrative Psychological and Behavioral Science
巻: 45 ページ: 116-131
http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~satot/