研究概要 |
本研究の目的は,中枢神経系の再生能を持つ多様な動物を用いて,切除後再生した中枢神経と記憶保持との関連について,学習心理学の立場から検討することである。本格的な学習実験を開始する前段階として,本年度は(1)飼育法の確立,(2)条件づけの確立,(3)手術法の習得の3点を目標に研究を進めた。これは本研究で利用する中枢神経再生能を持つといわれる動物(プラナリア,アフリカツメガエルの幼生,グッピーとゼブラフィッシュの幼生)が,いずれも心理学的研究においてほとんど用いられてこなかった動物だからである。プラナリアに関しては自然採取で入手し,カエルと魚類の幼生は成体を繁殖させることで入手した。飼育法に関しては,いずれの動物においてもそれぞれの動物にあった水質と水温をしっかり管理すれば長期飼育可能であることが分かった。ただし繁殖は簡単ではなく,ゼブラフィッシュとアフリカツメガエルの産卵にはまだ成功していない。条件づけに関しては,餌を報酬にしたり電撃や酢酸を罰に用いた明暗弁別や左右弁別学習を試みたが,いずれの種でも多くの個体が装置内で動かなくなってしまうなど,実験手続や実験装置の改良がさらに必要である。被験体の動きをビデオカメラで撮影し,その動きを後に画像解析を行うことについては問題がないことが確認できた。手術法に関しては,肉眼または顕微鏡と眼科用手術器具を用いれば十分解剖が可能であることが確認できた。本格的な手技の習得については,条件づけの目処がついた段階で開始したいと考えている。
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