本研究は、2000年代の日本において「高校と大学の接続」(以下「高大接続」と略す)が、1980年代から1990年代の流れとは大きく異なる新しい仕方で再定義されるようになったという現象に着目し、それがどのような要因によっているのか、また今後どのような仕方で再定義されるべきであるかという課題について、A)実証的かつB)理論的な研究によって検討することを目的としている(「研究の目的」)。 Aについては、現在の日本に関連した実証研究を実施した(「研究実施計画」のA)。まず、(1)現在の日本の大学入試のあり方に焦点を定め、それが、高校及び大学で必要とされる「能力・技能」との関係でどのような特徴をもっているかについて、高校三年生の担任を対象として全国の高校から半数を抽出し意識調査を実施した(同じくA2)。(2)さらにそれを、大学入試センターのデータとも接続しうる仕方でデータ入力を行った(同じくA3)。この(1)(2)の作業は、上記の目的をたしかな仕方で論ずるデータを整えたという意味できわめて重要な意義をもっている。(3)それとともに、関連した事例についてのインタヴュー調査を実施した(同じくA7)。この調査は、(1)(2)の調査を補足する意義をもっている。 Bについては、研究会のこれまでの研究成果および最近の文献を総合しつつ、「高大接続」において重要となる「能力・技能」についての理論的な類型化を行い、他の研究成果にもよりながらその類型化を操作化する方法について具体的に検討した。この作業は、(1)のアンケート調査の設計を行い、質問文を構築する上で重要な意義をもった。 以上の作業をすすめるため、四月に一回、八月に一回、十月に二回、三月に一回、計四回の研究会を実施した。
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