「気になる」子どもが「発達障害の疑い」として顕在化してくる3歳児クラスから5歳児クラスまでの3年間にわたって、1)「気になる」子どもたちの「問題」が他の子どもたちとの関係でどのように変化していくか、2)「気になる」子どもたちとともにあって楽しい集団遊びづくりの方法、3)友だちとの親密性の形成が、「気になる」子どもたちの情緒的安定や自己制御力に与える影響を明らかにすることを目的として、保育者との協同的実践追跡研究を継続した。3歳児クラスの時は他児への乱暴な行動や保育者の「注意の言葉かけ」への反応や行動改善が乏しいことが「気になる」姿として着目されていたのが、4歳児クラスでは、イメージやルールを共有して遊ぶことが難しく孤立しがちなこと、相手の気持ちを考えられないことなどが「気になる」姿としてみられるようになった。今年度から新たに対象クラスの実践記録では、「気になる」子どもの否定的な姿のみに着目され、保育者からの否定的な言葉かけが多いが、昨年度から継続しているクラスの実践記録では、「気になる」子どものプラス面への着眼や「受けとめる」言葉が多くなり、「子どもとの信頼関係が築けてきた」と実感できていることが重要な変化であった。子どもの自己信頼性の発達と「集団づくり」上の課題を整理した筆者の理論的仮説をもとに、「気になる」子どもが好きなものをベースとしたごっこ遊びや、わかりやすいルールのある遊びがしかけられた結果、とくに4歳児クラスでは「わかりやすいルール」に変更することで「気になる」姿が落ち着いた、との報告が相次いだ「親密な友だち関係」の形成と行動調整能力との関連が示唆されているが、「親密な友だち関係」を意図的につくりだす保育上の工夫(二人組やグループ編成)については、「集団づくり」の考え方を学びながら進める必要があり、今後の検討課題として残された。
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