研究概要 |
今年度は、「保護と遺棄」に関連して、2010年10月31日に関西学院大学梅田キャンパスで開催した比較教育社会史研究会2010年秋季例会でセッション「戦時体制下の障害児者の教育」および「福祉国家と教育」を行い、前者では北村陽子(愛知工業大学)「第二次世界大戦期ドイツにおける戦争障害者の職業教育について」と河合隆平(金沢大学)「恩賜財団愛育会と戦時下の障害児保育問題」、後者では羽田貴史(東北大学)「戦後福祉国家像の一考察」、高岡裕之(関西学院大学)「20世紀日本の「福祉国家」」からなる4本の研究報告と討論を実施した。それらの成果のうち、北村と河合の報告については、前年度3月に実施した研究会での三成美保・岡部造史の報告及び高田実のコメントともに、ディスカッション・ペーパーとしてとりまとめて(『「子ども」の保護・養育と遺棄をめぐる学際的比較史研究(比較教育社会史研究会)ディスカッション・ペーパーWEB版』第2号)、後掲のURL(関西学院大学リポジトリ)で公開した。これは、DP第1号と合本・再編集のうえ、2011年6月に中間報告書として刊行した。 年度末の2011年3月にはお茶の水女子大学を会場にセッション「「保護・遺棄科研」二年間の到達と課題」および若手を主体としたセッションでの中村勝美(西九州大学)「文献レヴュー"Pamela Horn,Children's Work and Welfare,1780-1890,Cambridge,1994"」、増田仁(熊本大学)「戦後日本における農繁期託児所と子どもの生活世界-山形県鶴岡市を事例に-」を予定していたが、東日本大震災の影響で開催を断念せざるをえなかった。このうち、前者のセッションについては、時期を繰り延べて2011年8月2日に関西学院大学東京丸の内キャンパスで研究会を実施し、沢山・小玉による問題提起とあわせて、橋本伸也(関西学院大学)が「『「福祉国家と教育」をめぐる論点メモ-主としてヨーロッパの文脈から』について」を提示して、ヨーロッパにおける福祉国家形成と「保護・遺棄」問題の包括的な把握を試みた。これには、岩下誠(慶應義塾大学)、森直人(筑波大学)が討論者として補足報告を行った。
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