研究概要 |
本年度は,次の三つの研究を行った。 第一に,小学校社会科を中心に,日本型サービス・ラーニングに関する授業実践を行った。授業を実施するに当たっては,まず,筑波大学附属小学校の梅澤真一先生の協力を得た。具体的には,単元開発の段階で,筑波大学附属小学校の周辺の地域的な課題(例えば,東京メトロ茗荷谷駅周辺の違法駐輪問題など)を積極的に社会科教材として取り上げてもらい,さらに,プロジェクト型の学習を組織してもらった。また,千葉県船橋市立南本町小学校の校内研修を活用して,日本型サービス・ラーニングの有用性について説明した。同校では,2010年度より3年間,市の社会科教育研究指定を受け,「社会参画意識を高める社会科指導のあり方」の研究を進めている。 第二に,二度に渡って米国を訪問し,米国の研究者や実践家と交流しながら,「日本型」の特質について意見聴取を行った。また,二回目の渡米では,インディアナポリス市を訪問し,サービス・ラーニングの授業を見学し,日米の違いに関する知見を深めた。その結果,日本型サービス・ラーニングの五つの必要条件(「地域社会の問題を教材化すること」「プロジェクト型の学習を組織すること」「振り返りを重視すること」「学問的な知識・技能の習得,活用する場面を設定すること」「地域住民の協働を重視すること」)に関しては,いずれも米国の方が組織的・体系的に実施されているが,日本の授業研究の充実度を勘案すると,日本においても米国のようなサービス・ラーニング実践を実施することは十分に可能であろうという手ごたえを得た。 第三に,二年間に及んだ本研究の成果を,土木計画学研究発表会と全国社会科教育学会全国研究大会の二つの学会において,発表した。今後もこのような研究成果報告を継続させ,日本型サービス・ラーニングの定着に尽力したい。
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