研究概要 |
昨年度,小学校5~6年生用の「ハリーストットルマイヤーの発見」の論理学的な要素とそのテキスト部分の徹底的な分析と同学年における理科の目標とのマッチングを進めてきた。理科・社会における「子どものための哲学」の導入の可能性としては,調査資料および観察・実験における結果に対して行われる考察場面での推論活動に有効に機能することが示唆されてきた。 そこで,平成23年度は,これらの研究成果,並びに反省をふまえ,具体的に理科学習において「子どものための哲学」の推論過程を導入した授業を設計し実践した。授業は第5学年「ふりこのきまり」全7時間である。ターゲットとなる論理的な推論過程は、第5時間目「振り子が1往復する時間が変わる条件についてまとめる」場面である。この授業の前に行った3つの条件に対する実験の結果を整理しまとめていく過程で、論理学のベン図を用いてまとめ、理解を深めることを目標とする。この理科の授業に先行して「ハリーストットルマイヤーの発見」の第3章「トニーとお父さんの会話」部分を参考に、1授業時間用の「子どものための哲学」授業を行った。この哲学授業で取り上げたベン図を使った推論活動と理科授業の実験結果の考察とを有機的に結びつけさせようとするものである。一連の授業実践は、宮崎・延岡市立北浦小学校で行った。さらに、今回の「子どものための哲学」授業については、その実践可能性を確認するために浜松市立与進小学校においても実践を行った。実践の結果は、両校ともに良好であった。 また、これまでの実践結果をもとに、「子どものための哲学」を実践できる教員を養成しているハワイ大学の教員と意見交換するとともに、ホノルル小学校、カイルア高校の「子どものための哲学」授業の実践を調査し、他教科についても論理学的推論過程での活用可能性について情報収集を行った。
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