研究概要 |
平成21年度の研究において次の結果を得た。 1.高次ガウス超幾何関数を周期積分に持つ射影直線から3点0,1,∞を除いた代数曲線上のカラビ・ヤウ多様体族(ガウス超幾何カラビ・ヤウ族とよぶ)の構成とその相対的コホモロジーの決定およびモジュラー性などの数論幾何への応用 2.代数曲線上のFアイソクリスタルの形式解の対数的増大度に関するドウォーク予想の部分的解決と対数的増大度とフロベニウス傾きが一致する条件 1の研究は当研究課題の連携研究者の山内卓也氏との共同研究で、数論的半安定族の構成、一般点におけるピカール数の決定、代数的サイクルとコホモロジー環の関係に成果を得た。また、モジュラー性など数論幾何学への応用も与えた。ガウス超幾何カラビ・ヤウ族は、楕円曲線のルジャンドル族の自然な拡張になっていて、高次元の数論的多様体の具体例を与えた重要な萌芽的研究である。多様体族としての特異点解消や数論的半安定族を利用したコホモロジーの計算など、技術的にも意義深く、この多様体族の数論幾何学へのさらなる応用は今後の課題である。 2の研究はパドバ大学のキアレロット教授との共同研究で、(a)生成点における有界Fアイソクリスタルがフロベニウス傾きフィルトレーションに関して分裂することと(b)PBQ加群の場合に対数的増大度とフロベニウス傾きが一致することを証明した。この結果、ドウォーク予想の帰納的な扱いが可能になり、解決に向けた重要な進展を得た。
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