研究概要 |
一般化された超幾何関数を周期積分に持つZ[1/2]上の射影直線から3点0,1,∞を除いたスキームT上の滑らかで射影的なカラビ・ヤウ多様体族を構成して、その幾何的および数論的性質に関して成果を得た。この多様体族は、Legendreの楕円曲線族の高次元化である。1/2,…,1/2;1,…,1を指数に持つ一般化された超幾何関数はT(C)上のある開多様体上のGauss-Manin接続の0のまわりでの正則解であることはよく知られた事実である。研究代表者の都築はこの接続を数論幾何的に解釈して、2次被覆の性質を利用することにより、n次元の数論的なカラビ・ヤウ多様体族を構成して、そのコホモロジーが相対的な輪体と超幾何局所系で構成されることを決定し、この結果をパドバ大学で開催された数論幾何の研究集会で発表した。連携研究者の山内はこの多様体族の有理数体上の2以外にサポートを持つ点のファイバーがポテンシャルに保型的であることを示し、付随するL関数の関数等式を決定した。 高次元の代数多様体の数論は、アーベル多様体やK3曲面(2次元のカラビ・ヤウ多様体)の場合を除いてほとんど研究されておらず、この結果はその先駆けになものである。高次元の非自明な多様体でコホモロジーが決定されている例はわずかであり、そのL関数がわかっている例はほとんどない。また、この多様体族は数理物理学との関係においても面白いものになると見込まれる。
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