研究概要 |
一般化されたn次超幾何関数を周期積分に持つZ[1/2]上の射影直線から3点0,1,∞を除いたスキームT上の滑らかで射影的数論的カラビ・ヤウ多様体族を構成して、その幾何的および数論的性質に関して成果を得た。この数論的族は、楕円曲線のLegendre族の高次元化にあたる。研究代表者の都築は一般化された超幾何関数を導く反復積分を数論幾何的な操作に置き換え、2次被覆の性質を利用することにより、n次元の数論的なカラビ・ヤウ多様体族を構成して、そのコホモロジーが相対的な輪体と超幾何局所系で構成されることを示し、ベッチ数の母関数を決定した。連携研究者の山内はこの多様体族の有理数体上のファイバーの性について考察し、有理数体や総実代数体上の潜在的保型性を示し、付随するL関数の関数等式を決定した。この結果を、2011年11月に数理研で開催された研究集会「代数的整数論とその周辺」で講演した。現在論文執筆中である。 高次元の代数多様体の数論は、アーベル多様体やK3曲面(2次元のカラビ・ヤウ多様体)の場合を除いてほとんど研究されていない。この例は、Legendre族の極めて自然な高次元かであり、それにもかかわらず今まで知られていなかった例である。一般超幾何関数は、解析的・幾何学的な性質からのアプローチも可能で、詳細な研究が可能な対象である。今後、さらなる数論的性質の研究の対象になるものである。また、数理物理学との関係においても面白いものになると見込まれる。
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