「研究の目的」では、有限体上の射影直線の関数体に値をもつ一般線形群に付随する保型関数の「周期」と呼ばれるべき値の計算を予定していたが、それについて直接の進展はなかった.代わりに行われた関連すると思われる研究は次の通りである. 以前の関数体上の保型関数のL関数の研究の際に、一般線形群の保型関数の非アルキメデス素点における局所L因子を、ニューベクトルの空間に作用するスタンダードな形のヘッケ作用素の固有値を用いての記述を行っていた.これは、付随する表現が不分岐な場合にはよく知られている公式であるが、不分岐でない場合には記述は見当たらなかったものである.L関数は定義より保型関数の積分値であるから、周期の計算に応用があるかどうかを問うという意味があるといえるだろう.これに関連して、上と同様の状況で、局所イプシロン因子をヘッケ作用素の固有値を用いて書き表す、という問題が考えられるが、この解決を昨年度は行った.より具体的には、与えられた許容表現のイプシロン因子は、その中心表現のイプシロン因子と、計算可能な簡単な関数、および、ひとつのヘッケ作用素の固有値の積と表されることを示した.その証明には、L因子のヘッケ作用素による表示、および、分配関数が自然にオイラー系をなす、という以前得られていた結果を応用する.この研究結果は、研究分担者である安田正大氏との打ち合わせの末得られた. ここで扱うイプシロン因子は古典的なものであるが、他にもイプシロン因子の現れる局面がある.統一的な理解がなされていないので、古典的な場合にでも簡明と思われる表示を与えることで、理解がすすむことを期待している.
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