古より知られている特殊函数の多くは、解析函数の定積分による表示をもつ。この表示により人類は、特殊函数に対する知見を深めてきた。では、そもそも何故定積分が現れるのか、或いは、現れる定積分に共通の特徴はなんなのか、といった基本的な問いがおこる。この問いに解答を与えることが目標である。更にこの枠組みのもとで、特殊函数に惹き起こされる種々の現象を解明することを目指している。特に、合流過程とよばれる、ある種の極限操作を理解することが本研究課題である。亦、ここで得られる解答を逆手にとると、ある理由のもと現れる定積分、或いは、ある特徴をもつ定積分には、対応する特殊函数がある筈である。特に、合流過程の理解を深めることにより、新たな函数を発掘できる筈である。さて、当該年度においては、このような定積分を特徴づけるためのインフラ整備へむけて「地質調査」を行ってきた。標語的には、「定積分=ホモロジー・コホモロジーのペアリング」という位相幾何学に起源を持つ哲学を(特に合流型=合流過程の極限を含めて)実現するための枠組みの模索、である。その成果として、有望な理論の構想がまとまった。具体的には、位相幾何学的データ(確定特異点型=合流以前では必要十分なるデータ)からの不足分をうまく補って、合流型でもうまく機能する理論の構築を目指した。技術的には、積分する際にひっかかる特異点に於ける解析的データを位相幾何学的言葉にエンコードする処方が山場であった。これを克服する方針を得た。また、これらの情報を具体的に抽出・計算・表示する指針も得た。現在は、1次元の場合にこれら細部を詰める作業、及び論文にまとめる作業に移行している。
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