特殊関数は、純粋数学から物理学・工学に亙って現れる重要な対象である。この対象にオイラー型積分表示から本研究はアプローチするものである。確定特異点型微分方程式の解を積分核とするような第一種オイラー型積分は、比較的多くの知見が得られている。(ここで一つの鍵を握るのは、リーマン・ヒルベルト対応である。)一方で、不確定特異点型微分方程式の解を積分核とする第二種オイラー型積分については、その(コホモロジカルな)定式化を含め未解明な部分が多い。これについて、理解を深めることが本研究の目的であった。特に、確定特異点の極限として不確定特異点をつくりだす「合流過程」をつかめることを目指してきた。 第一段階として、第一種、二種問わずに適用できる(コホモロジカルな)オイラー型積分の定式が必要となった。現段階で、他社により提唱されている定式化では、我々の目的には不充分とみられ、この部分から自前の理論を模索することとなった。ここで得られた知見は、 1.不確定特異点型に於いて適切なる「リーマン・ヒルベルト対応」を定式化することの必要性、特にベッチ側の定式化が必要なこと、 2.コホモロジーは、単なるベクトル空間としてではなく、何らかの付加構造込みで考えねばならないということ、 3.特に2.の付加構造は、不確定特異点の局所構造をエンコードするものであることである。これらの必要性に応えるべく枠組みを模索している段階で、本科研費の研究期間が終了した。
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