この研究の目的は、楕円曲線やアーベル多様体の有理点(不定方程式の有理数解)を求めるという古典的な問題について、p進的手法を用いた新しい方法を開発することにある。今までの研究により、楕円曲線がpで超特異還元を持つときに、Mordell Weil群の階数が1の場合には、p進L関数を使って、有理点を構成する方法が得られているので、それを発展させることを考えた。代数体に対しStark予想を使って、Stark単数がL関数の微分の値から作れることの類似という観点からも研究した。任意の代数体上、特に3次体の上の有理点がこのようなp進的方法で作られるかどうかについて、Birch Swinnerton-Dyer予想の観点から研究した。イギリスのケンブリッジ大学を訪問して、John Coates教授とこの問題を中心とした楕円曲線の岩澤理論についての研究討論を行った。また、カナダのMcGill大学のDarmon教授およびアメリカのBoston大学のPollack教授ともこの問題について討論を行い、考え方の方向性について、多くの示唆を得た。また、イギリスのNottingham大学のWuthrich教授と新しいp進高さ関数の定義について、詳しく討論したことも研究の進展に役立った。これらのp進的に構成された点を、一つ一つの点として見るのではなく、点の族として見ることにより、全体的な性質を調べることが重要であると思われる。すなわち、Heegner点の族と同じような性質を持つか、Euler系的な性質を持つと思われるが正確にはどのような性質を持つか、Heegner点の族についてのMazurの予想の類似はどのようなことか、などの重要な問題が考えられる。しかしながら、このような研究はまだ中途段階でしかなく、これから継続する予定である。
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