研究概要 |
論文"On an abelianization of SU(2)WZW model,Ann.of Math."において構成したSU(2) WZWモデルの共形ブロックの基底が、Hitchin Systemの中心拡大に相当する空間上の保形関数であることを明らかにした。具体的には、リーマン面上のベクトル場のなす無限次元リー環がリーマン面のJacobianを中心に持つ中心拡大である無限次元リー環に拡大される。これはI.Frenkelの結果であるが、筆者は上記論文で導入したshift operatorがこの中心拡大のリー環に値を持つ作用素であることを見出した。共形場理論におけるレベルシフト、中心曲率のAtiyahによる記述などはこの中心拡大を考慮することによってはじめて幾何学的に正確にとらえられる。これはHitchin Systemで、リーマン面上の階数2のベクトル束のモヂュライ空間上の正則直線束の正則切断をPrym Variety上の正則直線束の正則切断に'持ちあげる'仕方について、十分考慮を払わなければならないことを意味する。実際Prym Varietyに横断的な方向に非自明な曲率を持つ直線束が存在し、この直線束の曲率が上記のリーマン面上のベクトル場のなす無限次元リー環の中心拡大をもたらす。Hitchin Systemの空間だけではこの直線束に対する編極が構成できず、Hitchin SystemのJacobianによる中心拡大に相当する空間上ではじめて編極が得られる。この編極を用いて階数2のベクトル束のモヂュライ空間上の正則直線束の正則切断をPrym Variety上の正則直線束の正則切断に持ちあげることができ、対応する偏微分方程式が得られる。この偏微分方程式からもたらされる共形ブロックの基底の変換法則はShottoky問題とも直接関連し、現在研究中である。
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