空間に対するA∞構造の定義は、実は2種類存在し、両者ともがJ.D.Stasheffによるものである。一方は厳密な単位元の存在を要請するのにも関わらず、他方はホモトピー単位元しか必要としない。しかしながら、その同値であることのStasheffによる証明には重大なギャップがあり、これまで埋められて来なかった。ただそれにも関わらず、この二つの定義は同値であると固く信じられてきた。これに対して、Stasheffの主張するような形での証明は不可能であるが、ホモトピー単位元を持つものが別の厳密な単位元を持つものにホモトピー同値となるという意味でこの問題に決着を付けられたと考えている。具体的には、ホモトピー単位元しか持たないA∞空間に対して、特殊な形でその分類空間を構成し、これに付随する普遍射影のファイバーを取れば、これば元のA∞空間とホモトピー同値となり、さらにこれは厳密な単位元を持つA∞空間となるのである。さらにこの構成は一般化され、A∞右作用を持つ空間とA∞左作用を持つ空間の二つを取ったとき、これらに対して同時にそのA∞作用の分類空間を構成することができた。これは通常の右作用と左作用とに対して同時に構成されるtwo-sided Borel constructionをA∞作用の場合に拡張したものである。これによって、通常の作用をホモトピー的に変形してもA∞作用の意味で全くホモトピー論的な扱いに問題がないことが分かる。これを含めて現在まとめつつある60頁ほどの成果を書き留めた原稿に追加して、論文として再構成することを考えている。
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