原瀬・斎藤・松本は、線形疑似乱数の評価基準である「vビット精度での均等分布の次元k(v)」を求める高速アルゴリズムを開発した。手法は、Couture-L'Ecuyerの双対ラティスを用いる方法に対して、3種類の新奇なアイデアによる改良を行うというものである。まず、双対ラティスを用いてvを小さいほうから帰納的に計算していく代わりに、オリジナルのラティスを用いてvの大きいほうから射影的に計算していく。そのために、ラティスの一次独立とは限らない生成元に対するラティスリダクションアルゴリズムを開発した。ラティスの元である無限級数係数ベクトルを表示するのに分数式を使う代わりに、疑似乱数発生機の状態を使う。これらの改良により、Couture-L'Ecuyerの方法よりも理論的計算量を下げることに成功し、計算機実験でも10倍以上の高速化に成功した。これは、並列化にともない現在需要が広がっている「動的な乱数発生法の生成」において有意義な技術と言える。結果は原瀬によりベルギーでの国際会議にて発表され、共著論文は米国数学会の国際学術誌に受理されている。 斎藤は、近年利用が広がっている画像処理用のプロセッサGPUに対して、そのアーキテクチャを生かして高速に疑似乱数を発生させる方法を開発し、Graphic Processor Mersenne Twisterとしてホームページ上で公開し、大きな反響を得ている。この成果は、統計数理研究所の乱数ワークショップで招待講演として発表される。 米国スタンフォード大Owen教授と松本と西村は、マルコフ過程モンテカルロ法に対してlow descrepancy seriesを用いて収束を早める技法を共同研究し、そのために必要な並列で長さが可変のlow descrepancy seriesのファミリーを構成した。現在共同研究中である。
|