研究概要 |
確率的現象を計算機シミュレーションする際、擬似乱数発生法が必要となる。金融・物理・工学・生命工学など、あらゆる分野で大規模に擬似乱数が利用されている。しかるに、既存の擬似乱数発生法は、大規模化に対応できていない。特に、多数の擬似乱数ストリームを高速大量にもちいる並列計算型のシミュレーションにおいては、どのような発生法が安全であるかの評価法すら、ほとんど研究結果が存在しないのが現状である。本研究課題の目的は、以下の二つである。 1.並列化・大規模化が要請する、新型機能をそなえた擬似乱数発生法の開発 2.並列化・大規模化に対応した、擬似乱数発生法の評価法の確立 上記に沿って、平成22年度においては、グラフィックプロセッサなどの高並列チップ上での疑似乱数発生法MTGPを開発し、特に、分散処理に適した、疑似乱数発生法ごとに異なる漸化式を用意する「パラメトリゼーション」の技術とその高速化を行った。さらに、高速ジャンプの機能を有し、並列化に適した初期化のコストの低い疑似乱数発生法tinyMTの開発に着手した。前年度に引き続き、パラメータ毎の疑似乱数の品質を評価するアルゴリズムの高速化を行った。成果は、高速格子簡約(SIS,PIS)による品質評価法として、Mathematics of Computationに掲載されている。また、既存の乱数検定法は、確率値の羅列を出力するもので、非専門家にはその意味を図ることが難しいものであったが、自動的にサンプルサイズを選ぶことで「白黒」をはっきりつけるような検定法を開発しつつあり、プログラムを一部ホームページ上で公開した。 米国UCLAから、Art Owen教授の元指導学生Kyle Matoba博士課程学生を日本に招聘し、メール討議を重ねて共同研究を行い、数値積分のための超一様点列の新しい評価指標WAFOM(Walsh Figure of Merit)を開発した。論文は投稿中である。
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